●2006年2月の風月譚 
『 GOOD BYE Mr.CHIPS(チップス先生さようなら)』


            
 例年にない大雪で,大雪被害地、過疎地、高齢者集中地が等しく重なっております事で
なんとなく暗い気分になりますが,皆様新しい年明けはいかがでしょうか?
2月3日は節分の日であり,更に福沢諭吉先生の105回忌(雪池忌)でもあります。
今年は慶応義塾開校150周年という事で、私事で恐縮ですが不真面目な学生時代の中で
数少ない記憶に残った話しに触れてみたいと思います。

1月の中旬、NHK教育TVで表題のドラマが放映されました。
昭和37年新入生として教養の英語の時間に、池田潔さんの講義を賜りました。
開口一番
『慶応には2人の池田がおる』
『一人は頭の黒い池田弥三郎で、もう一人は頭の白いワシである』
『頭の黒い男は,腹も黒い』

当時,池田弥三郎さんは国文学の教授で女学生には絶大の人気があり、池田潔さんの
この発言は、ある種の我々に欠けている「ユーモア」の一端をイギリス風に表現したのでは
ないでしょうか‐‐
池田潔さんは三井財閥の大番頭の御子息で、いわゆる「銀のスプーン」を銜えて生まれ、
幼少からイギリスのリース校というパブリック・スクールに留学しケンブリッジ大学,ドイツの
ハイデルベルグ大学を卒業しその後慶応義塾に長い間奉職された、最もイギリスの社会・
教育のあり方に精通した方でした。
私の先輩で敬愛して止まない鴻野精彦さん{(株)シェル石油大阪発売所顧問}に池田潔
さんの話しをしましたところ,実は自分も直接習い思い出があるとの事で、教授はすべてに
大変厳格で、喘息もちであったとの事でした。
彼の名著「自由と規律」の初版は1949年,49歳の時のものですが今日既に90版を重ね、
イギリスに係わる本の執筆には欠かすことの出来ない本のようです更に,教育に携わる
教師にとっても必読の書となっていることが,この重版が物語っております。

今回の表題の小説「チップス先生さようなら」はジェイムズ・ヒルトンの作で,彼は池田潔さん
と同じリース校・ケンブリッジ大学を卒業しております。
舞台になったブルックフィールドという仮名の学校は、イギリスの代表的パブリック・スクール
のありようを記載しておりますが,それはリース校そのものであり,池田潔さんのパブリック・
スクール生活そのものであります。
私は必須科目であるこの授業はほとんど記憶に残っていないのですが、この授業の中でなん
でもない会話について教授が話されたことを鮮明に覚えております。
チップス先生とキャサリンが最初に会った時に「貴方の仕事は何ですか?」と尋ね,教師で
あることでほっとする話しですが最初は「弁護士か株式仲買人か歯医者か、でなかったら
マンチェスターの木綿問屋さんじゃないかと思ったんですよ」という文章についてであります。
80年から120年前のイギリスについて私の従弟で、現在長野大学産業社会学部の助教授
の土田俊幸君にマンチェスター大学留学を振り返って色々と教えてもらいました当時は貴族
(ほとんどに没落の兆しが見え)、次に新興企業家(金融業者,会社発起人,製薬会社など)
中流階級(月給)と労働者階級(時間給)の4段階に分類されたようです。
没落貴族の女性が,新興実業家との結びつけた話しは,「タイタニック」にも載っております。
他方,第一次世界大戦前夜の時代でもありました。
当時から弁護士とか教師は信頼される職業として確立していたようですが,ほかの職業に
ついてはどうであったのか、私の貴重な友人でロンドン大学・大学院を卒業したPHD吉田勝巳
(元ロイター・ジャパンの勤務)さんに聴いてみました。
彼がイギリスの友人に質していただいたのですが、当時歯医者になるのにたいした厳しい資格
審査も必要なく、最初に歯科医に関する法律は1878年に制定されその後、英国歯科医協会
は1880年に発足したとの事です(英国医師会は1832年設立との事です)
株式仲買人も新興職業として貴族を初めとする特権階級からみると“Charlatan”(おおぼら吹き,
山師,偽医者)であったようで、キャサリンがチップスに職業を訊くという事は、生きるためにどの
ような仕事をしているのか彼の出来(しゅったい)を確かめたのでしたこの何気ない会話の中
に,その当時のイギリスの身分社会を垣間見ることが出来ると池田教授は結びました。

同じ授業時間にもう一つびっくりする事がありました。
この本は,菊池重三郎さんの翻訳が最も流布しているのですが、ある女子学生がテキストと訳本
を机において受講していたのを教授は見つけ、ものすごく怒りそれを投げつけました。
それほどに何故怒るのか理解できなかったのですが,彼の著書「自由と規律」の本を精読すると
良く分かります。
パブリック・スクールで先ず生徒に教えることは「正(善)と邪(悪)」なるものの本質を理解させ、
如何に正しく判断し行動することで、結果として自分の名誉を傷つけないことを学んでいるので
はないかと思います。
この具体的例として,イギリスのパブリック・スクールにおいては、試験中の不正行為は皆無で
あると記載しております。
当時からアメリカ,ドイツ、イタリアなどでは不正行為は当たり前であったようですが,イギリスの
エリート教育の中ではそのような行為は日本人流に言いますと「恥じるべき行為で自分の名誉を
傷つける行為」に相当すると言えます。
彼は彼女のこの礼儀を弁えない行為を許せなかったのでしょう。
このことを今日の我々の社会に当てはめて見ますと官製談合,政治家の不正行為、東横イン、
「堀江もん」に代表される若手成金連中など、正邪の区別を身につけてない結果が、今日を表し
ております。

池田潔さんは自由と規律の重要性をうたっておりますが、その規律の訓練には運動競技がなく
てはならないとのことです。
ほとんどの個人競技・団体競技の発祥の地としてイギリスではスポーツが生活の中の一部に
なっているようですし、これらを通しフェア‐精神を身につけているのではないでしょうか‐‐
生まれながらにして人間は「俊馬」と「駄馬」があるようですが,勝負事に負けたときの態度で、
そのどちらかであるか、明らかになるようです。
「俊馬」は顎を落としたり,悪びれた様子を見せないとのことです。
いかなる時においても「俊馬」でありたいものです。

最後に有名な言葉:
 
 規律なき自由は放縦
 自由
なき規律は専制


P/S
 松山地裁が無罪の人に自白強要の証拠はないということで賠償責任却下の判断をしたのですが、
この人は裁判官として適切なのでしょうか?? 
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●2006年1月の風月譚 
新しい年 平成18年


2005年
12月 酉年を振り返って
11月 トンカット・アリと6年
10月 NHKラジオ深夜便
9月 智と徳
8月 終戦60年-怒りそして悲しみと苦しみの中で
戦争遺児として私の一言
7月 上期4題
6月 椿ちゃんは2歳
5月 25回目にあたって
4月 4月は新たな出発の月=私の高校時代=
3月 故郷 札幌 昭和30年頃まで
2月
雪池忌によせて
1月 酉年にあたって


2004年
12月 平成16年を振り返って
11月 書物は知識の源泉
10月 故 野中 孝一さんと「SPIN トレーニング」
9月 ハインリッヒの法則(1:29:300)とパン屋の経営
8月 私のPROJECT-X 甲子園への道(PART2)
7月 私のPROJECT-X 甲子園への道(PART1)
6月 6月10日は時の記念日
5月 FENWAY PARKの思い出
4月 お釈迦様と四聖諦八正道
3月 『起業5年目にあたって‐‐新たに知った事・新たな財
2月
『OFFSET BALANCE(得たものと失ったもの) 
1月 『暴君の初夢』 

2003年
12月 『6歳のLADYに学んだこと 』
11月 『文化そして万歳三唱 』
10月 GOLD FINGER 荒木 敏明 君 』
9月 9月11日とイスラムの人々 』
8月 戦後と58年後の今日 』
7月 『三色旗ー自由,平等,博愛 』
6月 『JUNE BRIDE (6月の花嫁)
5月 『とつき十日の下宿屋の宿賃』


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